馬鹿と自転車と青い海!その3

その1はこちら
その2はこちら
その3はこちら

単なるスタジオ撮影から、急遽、沖縄ロケに変更になったのは、前回お伝えしましたが、さあ、そこからが大変、制作会社はロケハンしなきゃいけないし、宿の手配からなにから、一からスケジュールも組み直さないといけなくなって、言い出した僕は命預ける自転車だから自分で調達しますね!なんて軽く言ったもんだから、手頃な自転車を探さないといけなくなったりして、そりゃもうエライことになりました。やっぱ、幸宏さんみたいにスタジオで黙って立っときゃ良かった!(笑)

自転車はマウンテンバイクにせずに、敢えてママチャリっぽい方がお洒落かなと思って手配しました。後は、飛び出すイメージです。当然、より高く飛び出す為にジャンプ台も頼んでおいたので、ジャンプする瞬間、こう、ハンドルをしゃくり上げて飛び出すみたいな、そんな感じをイメージしながら、ロケまでの間、手配したママチャリを使って普通の道でイメトレしてました。
でも実際は海に向かわなきゃいけないわけだから、冷静に状況を考えると、岸壁からだと海水面まで2メートルぐらいはまずあって、それにジャンプが加わると、多分4、5メートルぐらいの高さから落ちる事になります。もうそれを考えた時点でヤバすぎて、イメトレだけでも根性がいります。

イメトレの結果、水面に自転車が当たった時の反動で胸をハンドルで打つんじゃないかって言う事が一番心配になったので、取り敢えず、飛び出したら、早い段階でハンドルを離して、着水の時に出来るだけ体から自転車を遠ざけるようなイメージを繰り返し描いてました。

実は、今回のCM撮影にあたって、自分から言い出したのにもかかわらず偉そうに、条件を二つも出してました。一つ目は、絶対に自転車で飛び込むリハーサルはしない事。もちろん僕は当然の事として、事前にスタッフにもやらないで欲しい。と頼んでおきました。事前にやっちゃうと、やっぱり緊張感が無くなってつまらなくなるんですね。こういったモノは緊張感が全てで、それがやっぱり画面に出ます。ドキュメンタリータッチじゃなくて、本当にドキュメンタリーでなけりゃ、越前屋俵太としては、やる意味がありません。

自分でも前もってやってた方が、本当は確実に失敗せずに出来るんですが、今回は、それやっちゃうと、本当におもしろくなくなるんじゃないかと思って、あれこれ考えた結果、そうお願いしました。そりゃ、本当はリハーサルしなければ不安です。でも、いきなり本番だと、あれこれ悩んでいても仕方がない、えい、やってしまえ!ってことになる。アドレナリンがドバッ~って出る瞬間です。

二つ目は、一回しかやらないよ!という事です。これは偉そうにカッコ付けて言ってんじゃなくて。普通、ドラマとかは特にそうなんですけど、同じシーンでも何度も別の角度から撮って編集します。もちろん演出によっては、ワンカットでOKという場合もありますが、今回は、緊張感を映像に落とし込んで欲しいので、CMとはいえ、あまり編集せずにそのままの映像を使って欲しいって頼みました。だから一回に全てをかけるから、もし編集でいろんな映像が欲しければ、一度にいろんな所からカメラを回して下さいって頼みました。まあ、この二つさえ押さえておけば、大丈夫だろうと思ってたんですが、、、。

それでいよいよ撮影当日という事になって、沖縄の撮影現場に着いてみると、やはり厳しい大人の現実が待ち受けていました。監督が嬉しそうに、「俵太さん、怖かったですけど、意外と大丈夫でしたよ!」って一体何が大丈夫なんだぁ~!何が意外となんだぁ~!もしかして、監督、飛んじゃったんですか~?やっぱりタレントさんに危険な事をやらせて、もし何かあってはいけないという理由で、監督が事前に飛び込みましたって事でした。

おまけにご丁寧に、監督さんが飛んでるビデオを見せられちゃいました。こんな感じですって。なにすんだ~!あれほど頼んだのにぃ~!それも監督は跳んでるというより、落ちてるって感じの映像でした。私のイメトレは一体なんの為だったんだぁ~!そんな映像を脳裏に焼き付けさせてどうすんだぁぁぁ~!

子供みたいな事言ってると思われるかもしれませんが、先にやっちゃ、何かズルイよね。緊張感なんかどっかいっちゃうし。僕にとっては一大事です。

明日、チョモランマ頂上にアタックしますって、アタックするはずの本人が言ってるのに、前の日にスタッフが一応アタックしておきました。大丈夫です!登れますからって、いってるようなもんでしょ。冷静に考えれば、いろんな意味で仕方ないんだけど、やっぱり言い出した僕に最初にやらせて欲しかったなぁ。

実際には当然、カメラさんの都合もあるし、海に自転車で落ちた後、水中に沈んだ自転車を引っぱり上げたり、タレントさんの安全を確保する為に何人かのダイバーさんに水中に待機して貰ったりしないといけないわけだし、その人達にしたら、一回リハーサルしとかないと、いきなり本番で問題があったらいけないわけだし、仕方がなかったんでしょうけど、でもなんか僕自身の緊張感は盛り下がる一方なわけです。
でもスタッフは、さあいよいよ本番だ!って反対に盛り上がってる訳です。何とも言えない空気がその場を支配し、刻一刻と本番が近づいて来ます。

全ての準備が整って、カメラが回って(フィルムで撮ってます)、いつでもOK!です。俵太さんのタイミングでやって下さい!って事になりました。

飛んだ時に赤いコートがヒラヒラするイメージを描きながら、この日の為に買った真っ赤なイッセイミヤケのコートを真っ白のスーツの上に羽織って、自転車にまたがりました。

目の前には、一本の道が(実際は桟橋ではなく防波堤でしたが)あって、その先は道が切れてて、海ではなく空が見えてます。助走距離、約30メートル。
ペダルに足をかけ、あらためて、自分の前に誰もいない事を確認した瞬間。え~っ!これ俺がやるんだっけっ?!て思いが全身を突き抜けます。

何気なくペダルをこぎ出した瞬間から、全身をアドレナリンが駆け巡り、漕げば漕ぐ程、スピードが出れば出る程、道がなくなり、空がだんだん近くなってきます。ジャンプ台がどんどん迫ってくる。ジャンプ台の先に海が見えて、あっ~現実なんだ~。という気持ちが最大に達したその瞬間、自分という存在の全てがなくなりました。

着水という現実に引き戻されるまでのコンマ何秒かの間、僕は間違いなく自然と融合していたんだと思う。

続きは、明日かもしれない。

ちょっと、次回の予告編を

「え~っ!嘘でしょ!撮れてなかったの~!」

これが、あなたの知らない越前屋俵太の世界です。


  • Kushihama Yasuyo

    はい。想像以上の世界です。