「橋下×羽鳥の番組」越前屋俵太オールカット物語 第三部 最終回

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越前屋俵太オールカット物語 第一部
越前屋俵太オールカット物語 第二部

司会者の橋下さんと羽鳥さんも、これ以上新しい展開もなさそうだからこの辺りでそろそろ終わりだろうな!と思ったであろう、残りわずかの時間帯に、僕もたぶんこれで最後だろうと思って、思い切ってこう切り出した。「橋下さん、最後にひとつだけ相談したいことがあるんですけど、いいですか?」

「もちろんいいですよ!なんでも仰って下さい!」橋下さんはニコニコしながらそう答えてくれた。

僕は体の中で生成されたアドレナリンが毛穴から溢れ出しそうになるのを押さえ込むように静かに、こう言った。

「あの~、実は今、政党を作ろうと思っています!」

その言葉を聞いた瞬間、それまで穏やかな表情で話を聞いてくれていた橋下さんの顔が、一変した。

「何言ってんですか俵太さん!さっき政治は嫌いだと言ったじゃないですか!」

スタジオ中に緊張が走った。それはあまりにも唐突すぎる発言だった。山籠りの話は、事前に打ち合わせの時に聞いたけど、政党をつくる?そんな話は聞いてない!慌てたのはスタッフだった。当然、僕もそんなことは喋った覚えなどない。何を言い出すんだ!越前屋俵太は!感が、スタジオを支配した。

橋下さんは、あきらかに語気を強めながら

「どういうことですか?俵太さん!それは話がおかしくありませんか?」と突っ込んで来た。その顔はテレビで見たことのある橋下徹だった。

興奮する橋下さんに対して、意外に冷静だった僕は「まあ落ちついて、最後まで聞いて下さい!」となだめるように話を続けた。「確かにさっき国民から税金を預かってるのに、皆さん全員の為だというのはおかしい!だから政治家は嫌いだ!というようなことを言いました。だから、僕は別に今の日本がこれでいいんでしょうか?と国民の皆さんに問う政党を作る気など、さらさらありません!そんな天下国家のことよりも、僕は今、自分自身のことで精一杯です。自分が情けないとも思っています!テレビがやらせだからどうだとか、噓が嫌いだとか、子供みたいなことを言っています。心が折れたからと言って、仕事を全部辞めてまで山に籠ったりしてしまって、ウジウジしてしまっている自分がいます。だから僕は、今の自分自身に対して、お前はこのままでいいのか?と言いたい!この国がこのままでいいのか?という問題は、立派な政治家の先生に任せるとして、僕は僕自身にこのままでいいのかと本気で自分に問いたいと思っているので、ここに自問自党を立ち上げようと思います!」

自問自党!その言葉を聞いた瞬間、さっきまでシ~ンと静まり返っていたスタジオが大爆笑の渦に包まれた。その日一番の大爆笑だった。険しい顔になっていた橋下さんも大笑いしていた。僕的には、なんだそういうことね!と思われて終わるはずだった。

ところが、次の瞬間、橋下さんが言ったひと言に、僕は耳を疑った。

「俵太さん!僕がその自問自党の幹事長しますよ!」

「ええっ~」

今度はスタジオ中が驚いた。僕はてっきりギャグだと思った。ところがそうじゃなかった。
何故そう思ったのかと言うと、橋下さんの発言に驚いた僕が

「ええっ、マジですか?橋下さん本当に幹事長してくれるんですか?」って聞いた瞬間
「ええ、もちろんしますよ!」って言ってから、ちょっと間があって、急に我に返った橋下さんが

「いやいや、うそうそ、こんなことうっかり言ったら、また何か書かれるかもしれないから、今のは、なしなし!」と慌てて言葉を撤回した。

スタジオが、そのやりとりに大爆笑した。

わざと言ったんだったらそんなリアクションは出来ない。思わず本当にそう思ったみたいだった。
こっちも面白くなってきたので、間髪入れずに

「幹事長がだめだったら、政調会長はどうですか?」とやった。

「それだったら、いい・・・いやいや、ダメダメ!カットカット!」

そんな、冗談とも本気ともとれる応酬が続いた。でもしばらくして、橋下さんは、真顔で

「維新の党と同じで法律政策顧問ならやりますよ!これだと問題はないですから!」って本気で言ってくれた。

彼が気にしてたのは二度と政界に戻らない!と言ってるのにまたこんなことで、マスコミに突かれるのが嫌だから!という理由だった。
でも、本当の政党を作って選挙に出る訳ではないので、さすがに丁重にお断りした。

僕の自問自党宣言は、今回の収録で唯一面白い場面だった。まさかの橋下さんの自問自党の幹事長就任宣言!放送出来れば最高に面白いと思ったんだけど、事情が事情だけに、間違いなく今回は全てカットされるだろうから、こうなったら、言いたいことだけはっきり言って帰ろうと、更にこう続けた。

「自問自党は人に選んで貰う必要がないので、自分で自分に投票するんです。例え今日の自分が情けなくでも、明日の自分は頑張れる!と思って、みんな明日の自分に一票を投じるんです。だから自問自党の選挙の投開票はみんな自分自身に一票入れて、党首である僕が全員の名前を読み上げて、全員にバラをつけるイベントをします!これが自問自党です!」

僕とすれば、最初はもちろん、放送して貰えるようにしないといけないと思ってたけど、ここまで来たら、放送するしないなんて、べつにどうでもよくなっていた。橋下さんに対しては、僕なりの言い方で、言いたいことは言ったし、橋下さんにも色々と教えて貰った。まあ、普通のタレントさんならそれじゃダメなんでしょうけど!僕にはそんなことは本当に関係なかった。

橋下さんは自問自党の話を本当に嬉しそうに聞いていた。まあ、実際の政党の話でもないわけだから、安心して僕の戯言を聞いてくれていたんだと思う。
そんな橋下さんに向かって、最後に僕はこう締めくくった。

「まさか今日、この場で、自問自党をつくるなんて話をするとは思ってませんでした。でも、反対にここで話してしまった以上、この想いを心に刻むため、オホーツク海から押し寄せる流氷でも見ながら、自分自身がこれからどうあるべきかを本当に自問自答するために、北海道にでも行ってこようかなと思っています!今日は本当にありがとうございました!」

ニコニコしながらその話を聞いていた橋下さんが、また一瞬マジになって、こう言った。

「俵太さん!流氷は僕も前から見たかったんで、一緒に自問自答にしに北海道に行きますよ!」

「ええっ~!」

横にいた羽鳥さんは呆れて、スタジオにいた人達は一瞬みんなあっけにとられた。

僕はてっきり、彼のリップサービスだと思ったが、橋下さんは念を押すように僕に向かってはっきりと言った。

「ええ、これはもう番組とかそんなの関係なしに、僕も一緒に行きます!」

その、数週間後、僕らは北海道の網走にいた。
隣にいた自問自党の幻の幹事長と共に流氷を眺めながら、それぞれの心の中で色んなことを自問自答した。

橋下さんは「二人で流氷を見ているところを、秘書に撮影させて、テレビ朝日に渡しておきますけどいいですか?」と言ってくれた。僕は気を使って「別に構いませんが、議論にもならなかったし、最後はなんかややこしことになってしまったので、たぶん放送しないんじゃないですか?」と言った。橋下さんは「いや、いつも言い合いばっかりじゃ、おもしろくないんで、たまにはこんなのもいいと思います。大丈夫ですよ!」と言ってくれた。

それにしても、何故あのとき橋下徹は「僕が幹事長をする!」って言ったんだろうか?今となってはその真意はわからない。
ただひとつ言えることがあるとすれば、本当に北海道に来た橋下徹は、政治家云々ではなく、人として普通にカッコ良かった。

~完~

三回に渡ってお付き合い頂いて、ありがとうございました。
もし自問自党に入党して自問自答したい人がいたらみんなで、何処かの島で結党大会ならぬ結島大会とかしたいですね!
自問自党 党首 越前屋俵太

橋下さんと落ち合う前日、たった一人で網走の流氷をバックに立党宣言をした写真がこちらです!